夜も朝も昼も夜も (1/4)

詩のようなもの

AM 01:35

夜の底に落っこちたつもりだったのに、短針はひとつぶんしか進んでいなかった。おかしいなと身体を起こして辺りを見渡す。ひとりきりの真夜中とひとりきりの水族館はよく似ている。といっても、僕はひとりきりで水族館に行ったことがないので、ただの空想との比較ではあるのだけれど。ひとりで水族館に行くと、きっと、この夜を思い出すのだろうなと考える。耳をすませればすませるほど覆いかぶさろうとするものは、取り囲む魚たちからの水泡によく似ているのだろうと僕は決めつけている。
孤独、と名付けたのはいささか安易だったのでは。僕はひとりきりのベッドの上で偉人ぶる。この夜の色を音をぬるさを柔さを深さをそんな二文字の中に押し込められるわけがないだろう。ないはずだ。だって、こんなにかなしい。それなのに、いつまでもここにいたい。ひとりで。
君と最後に出会った日のことを思い返してみる。そうはいっても数日前の話だけど。君は、あと少しだけだからと繰り返していた。あと少し、その少しをいつまでも待って、待っているうちに日が暮れたので僕は自分の部屋に帰った。君のあと少しはいつだって永遠だ。それと、君の今度いつかは、すべて嘘だ。
枕元のスマートフォンにあかりをつける。おやすみのひとことは眠りに落ちてしばらくのころに届いていた。君こそおやすみ、呟いた音は僕にしか届かないまま、君に気付かれないまま、あかりは消えていく。
だってこんなにかなしい。たったひとことで僕を孤独にする君はたぶん、残酷だ。

(2019/08/23)

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